鮎の田楽
碓氷川
安中・磯辺温泉
もんどう
こんにゃく 
なか
あん
りょう
てん
天領安中蒟蒻問答(上)
 司馬遼太郎「北斗の人」によれば『上州は天領であり、治安が緩やかでやくざの天国のようなところだった』という。岩鼻(いわはな)に代官所があるが、税収が主なる仕事で治安能力がない。巡回警察隊なる八州取締出役(はっしゅうとりしまりしゅつやく)いわゆる八州廻りが文化2年(1805)に創設。『赤城の山も今宵限りか』のせりふで有名な国定忠治、博打打ちの親分が最後にはこの八州廻りに嘉永3年(1850)捕まる。しかしその間なんと16年の逃亡生活・・・いかに警察能力が甘いかが露呈される。忠治、終いは脳梗塞で倒れ寝たきりだったというから「いい加減早く捕まえろよ!」が本音だったのではないか?
妙義山(ミョウギサン)
安中より東、碓氷峠方向を臨む.。
秋の紅葉が見事。
04.8.21
 『上州安中に蒟蒻屋六兵衛という親父がおり、そこに江戸から男が流れて居候(いそうろう)している』というのが落語「蒟蒻問答」の始まりである。群馬県安中というのは上野からだと乗継が良いと1時間チョイで着いてしまう。JR高崎駅から信越本線で3つめ。まず駅に着いて目が釘付けになるのは、すぐ前の小高い山の風景である。一面が工場で覆われて、何やらしきりに削り出している様子。駅員さんに聞いてみたら亜鉛(あえん)だという。そして隣町に磯辺温泉があるが、この温泉の味がしょっぱい。古代このあたり、海の底にあったために昔は岩塩が採掘されたという。つまりここの土壌は「亜鉛」と「塩」が大量に含まれ、薩摩芋を見て分かるように、土地が痩せているがゆえに蒟蒻芋という芋を栽培するのだ・・・と、円左衛門博士の推論はこのように達した。
安中駅より眼前に広がる風景
 さて、それを裏付けるためにネット検索をすると【こんにゃく懐石一粒(いちりゅう)】さんのサイトを発見した。こちらの掲示板では蒟蒻に関する質問を受け付けておられるので早速「蒟蒻芋に適した土壌とは?」というので寄せてみた。『亜鉛は微量元素(味覚中枢)として必要ですので適です。塩分は不適です(塩害)。安中の周辺にはこんにゃくの産地が密集しています。このあたりは古代に海中から隆起した古生土壌に、付近の火山から発生した火山灰の降り積もった土壌です。ご指摘の亜鉛も温泉水も深層から産出される物ですし岩塩も化石のような物でどこでもここでも採れるものではないと思います。というようなことで、安中市周辺のこんにゃくの栽培される土壌は、関東一円の土壌と大差のないもので栽培に影響するほどの塩分含有量は無いと考えられます』
蒟蒻芋の畑
下仁田蒟蒻
茹でた後にスライス、辛子酢味噌をかけて食べると絶品。
「腸の砂おろし」と呼ばれ、腸内の掃除に欠かせない食品。
 さらに、一粒さんご推薦のサイト【渋川地区農業改良普及センター】まで重ねて質問すると・・・『こんにゃくに適した土壌とは、土壌の排水が良好で、通気性のよいこと。土壌養分は豊富で、作土が深いこと。土性は、植壌土か壌土(粘土の割合が25〜37・5パーセントの土壌。作物栽培に最も適する)が適している。といったところでしょうか。安中の土壌が亜鉛が多い、塩分が多いと言うことについては、管外なので詳しいことはわかりません。しかし、亜鉛、塩分については、一粒店主さんの回答と同じに多ければ障害が出ます。こんにゃくは、痩せた土壌では生育が良くありませんので、バランス良く養分を含んだ土壌が適しています』
並木貯水池、タンクのイラスト
安政の遠足(あんせいのとおあし)
安政2年、安中藩主・板倉勝明候が藩士の心身鍛錬のため始めたといわれる。碓氷の熊野権現まで7里余りを遠足させた。これが日本のマラソンの起源といわれている。これが復活されており、毎年5月第2日曜日、29キロ走る。甲冑姿、九の一姿の女性と様々参加。
地元・上毛かるたでは「中山道偲ぶ安中杉並木」と唄われている。江戸時代の五街道のひとつ中山道・安中原市の杉並木、かつては700本以上あった。

 見事に素人考えは却下された・・・全く、安中は土壌豊かな土地なのである。どだい天領とは幕府の土地であり、北前船(きたまえぶね)の寄港地で栄えた所、物なりの良い土地だのに決まっている。天下を押さえた覇王、徳川家がわざわざショボイ土地を選んで押さえるわけがない。その上、四公六民(年貢を御上が4分、百姓六分)五公五民に比べれば、天領というのは武士が極端に少なく、支配の緩い地域では、実収入の10%前後であったといわれる。つまり一公九民!取り立ても緩やかである。今でも地元の産物に「天領○○」と名づけたり、倉敷のライオンズクラブでは「倉敷天領ライオンズクラブ」と名乗ったりもする。豊かさの象徴、とでも言おうか。したがって「蒟蒻屋の六兵衛の家に居候が始終ゴロゴロしている」という設定には無理がないということになる。なにげに落語とは事実に基づいており、たんなる空想話や滑稽談ではないのだなぁと、改めて感心をしてしまった。そしてその思いは次回で皆様にも、さらに強く伝わるものと確信をしている。                         
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